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森は今・・・

ボッソウ・ニンバのチンパンジーが住む森は・・・・

保護活動

ボッソウやニンバ山、デレ森林を含むニンバ保護区には、動植物相の固有種が多数生息し、ギニアの生物多様性という点においても非常に重要な地域です。この地域の開発計画は、環境と経済成長の微妙なバランスを十分考慮しておこなわれるべきでしょう。
 西アフリカのチンパンジーが危機的状況に陥っているため、80人の専門家が協力して保全計画を進めています(Kormos and al., 2003)。西アフリカのチンパンジーが生き残るためには、いますぐ行動を起こさなければなりません。ニンバ山は、6ヶ所ある最優先保護区のひとつです。ギニア、コートジボワール、リベリアの3カ国の国境が交わっており、ギニア側にはボッソウやデレ森林、コートジボワール側にはティアプル保護区が近接しています。この地域には450個体のチンパンジーが生息していると推定されています。
 ニンバ保護区は、この地域の生物の多様性を脅かす問題に既に直面しています。保護区にまたがる多くの場所で鉄鉱石の採掘や農耕、罠や銃を使った見境のない密猟がおこなわれ、生息地が破壊されているのです。

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鉱山開発

ギニア共和国の鉱山資源は非常に重要で多様化しています。国際的な鉱山会社がボーキサイトやセメント、金、ダイアモンド、岩塩の採掘をおこなっていますが、黒鉛や石灰岩、鉄、マンガン、ニッケル、ウランはまだ未開発です。2004年にはすべての鉱山業がギニアのPNBの16%を占めるようになり、これは国の歳入の25%、輸出品の80%に相当します。この国の収入と輸出において鉱山業は重要な産業です。

ギニアの森林の中でもシマンドウ地域とニンバ山で採掘される鉱床は、非常に質がよいことで世界的に知られています(鉄含有量が66~68%と推定されています)。ギニア側のニンバ山北部の鉱床は、Château, Sempéré, Pierré Richaud and Grands Rochersの4区域に分割されています。そのため、このうちの3区域の飛び地には境界が定められています。鉱床はニンバ山北側の斜面の保護区の境界から山頂まで、さらには山の反対側にまで帯状に広がっています。

 2003年にはニンバ山開発のための三度目の採掘協定が結ばれました。EURONIMBA(イギリスのBHP Biliton PlcとアメリカのNewmont Mining CompanyとフランスのAREVA/COGEMAの合併企業)が85%を所有し、残りをギニア政府(10%)とSMFG(5%)が所有する新しい会社です。

 現在、採掘の可能性や見込みのある土地を明確にするために、削岩作業が飛び地状の採掘地でおこなわれています。産業開発は8年以上経過しないと本格的に始められることはありません。

 採掘は、自然環境やそこに生息するチンパンジーに多大な影響を及ぼします。人々の流入は耕作の圧力を増加させ、そのため休閑する時間がなくなり、山の斜面にまで森林破壊と生息地の侵略が進んでいきます。さらに、採掘は土地の侵食をすすめ、水の汚染や水田耕作の悪化を引き起こしています。これが地域住民に深刻な影響を及ぼす物価の高騰をまねき、現金収入を増やすための密猟や狩猟、森林伐採などに拍車をかける結果となっています。

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生息地の破壊

開発途上国で起こっている生物多様性の地球規模での急速な消失は、農耕の広がりに伴う生息地の破壊が原因です。ギニアでは、森林を分断し個体群を孤立させてしまう、生息地の破壊がチンパンジーの生残に深刻な影響を及ぼす要因のひとつであると考えられています(Kormos and al., 2003)。開発途上国で自然環境の退廃の原因と考えられる2つの主要因があります。一つ目は、ギニアの人口増加や農業の近代化、非常に困難な経済状況などを背景におこなわれている伐採焼畑農業。二つ目は、ギニアでは小規模ながらもおこなわれている森林の商業的開発が挙げられます。

伐採焼畑農業は、自然環境に甚大な影響を及ぼします。森林は毎年切り取られて焼かれ、広大な土地がそのまま放置されています。ニンバ保護区の中心部も例外でなく、そのため生物の多様性が失われ、無傷の中央山塊は減少しています。 近年、地域住民の貧困から生じるさまざまな状況の下で、農業はギニア人にとって非常に重要になっています。主流な農耕方法は、耕作地を頻繁に変えなければならない伐採焼畑農業による単一作物の栽培です。

森林の商業的開発は、非常に短時間のうちに森林破壊が進みます。開発のための基礎や道路建設も環境に深刻な悪影響を及ぼします。地域住民は、骨の折れる農作業よりも楽な仕事を得るために現場の近くに移り住んできます。過去20年に、いくつかの伐採特権がギニア政府から国際的な会社に売却されています。木材資源はギニア南部で主に産出され、この地域ではあまり豊かではないのでそれほど重要視されていません。現在ギニアでは"Forêt Forte"がゼレコレを中心に直径300kmの範囲で開発特権を所有し、開発を進めています。1991年からMAB(Man & Biosphere Program, UNESCO)の国際礼譲やニンバ保護区の地域住民や関係当局によって検討されています。しかし、保護についての管理計画は、法律に沿ったものではありません。無秩序な伐採会社(Valoris S.A.)は、道路建設に地域の村を巻き込んで、もっともらしい主張をしてこの事業を正当化し、1999年から2001年に道路建設や森林から木材を切り出しをおこなっています。

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密猟

ギニアでは国内全域というわけではありませんが、一部の地域でチンパンジーの密猟がおこなわれています。Fouta Djallonは、比較的チンパンジーの個体密度が高い地域が2ヶ所あるギニアの森ですが、チンパンジーが殺されることはめったにありません。一方で、ニンバ保護区のいくつかの地域では狩猟によるチンパンジーへの影響が深刻です。

地域住民がチンパンジーを狩る主な理由は食肉利用です。マノン族のようにチンパンジーを殺したり食べたりすることが、文化的にも伝統的にもタブーとされている地域もあります。しかし、チンパンジーに作物を荒らされるという理由でチンパンジーが殺されることもあります。乾季の終わりごろの果実が豊富でない時期には、森で十分な食糧を得るのは困難になります。生息地の減少や分断化によってこの状況はますます深刻になり、チンパンジーは森から人間のいる耕作地へ食物を求めてやってくるようになっています。さらに、チンパンジーをペットにするための密猟もおこなわれています。幼いチンパンジーを生け捕りにするために、我が子を守ろうとする母親が殺されます。国際的にも国内的にもこのような行為は法的に禁じられています。しかし、いまだにこのようなことがおこなわれ、幼いチンパンジーを買う人間がいるのです。

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疾病

長期研究の調査地におけるチンパンジーの主な死亡原因は、伝染病です。チンパンジーとヒトはとても近縁なため、チンパンジーは、ヒトがもちはこんだ病原体や、ヒトを苦しめる病原体(例えば、結核症、ポリオ、肺炎、腸チフス、エボラ出血熱)に接触している可能性があります(Kondges et al., 2008)。研究とツーリズムは、適切に管理されなければ、ヒトとチンパンジーの双方に高い病気感染のリスクをもたらすでしょう。特にヒトに慣れたチンパンジーの群れでは、死の主要因となる呼吸器疾患に非常に脆弱です。

 2003年11月、ボッソウのチンパンジーの群れは突発的な呼吸器系の疾病にかかり、結果として4個体(幼児2、若いオス1、老齢のメス1)の死亡が確認されました。また、確認はされていませんが、上記以外の大人メス1個体も死んだと推定されています。
1976年の調査開始以降、記録にある限りでは、1992年にも1度だけ呼吸器系の疾病がボッソウのチンパンジー群に流行し、幼児1個体が死亡しています。こうした呼吸器疾患で幼児を失った母親2個体は、幼児の亡骸がミイラ状になってしまうまで数週間大切にもって歩く姿も観察され、チンパンジーの母子間で典型的にみられる強い絆を示しました(Biro et al., 2010 )。

2003年の流行病は、ヒトを介して感染する病気、特に呼吸器系疾病に対するチンパンジーの脆弱性を強く認識させました。また、今後同じような流行病の発生を防ぐことを目的に、ただちに現実的な対策を設けました。対策のひとつとして、チンパンジー観察ルールを作成しました。

  • マスクを着用する
  • チンパンジーの20m以内に近づかない
  • 森の中では飲食を控えるか、食べくずやごみを捨てない
  • 森の中で排泄しない 他。

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